AIは、私たちの指示(プロンプト)から意図を読み取り、保育の現場でも頼れるパートナーになってくれます。その能力を最大限に引き出す鍵は、私たちの「伝え方」にあります。より具体的で、分かりやすいお願いをすることで、期待を遥かに超える答えが返ってくるでしょう。
このガイドでは、おたより作成、アイデア出し、行事の準備、さらにはVBAを使った業務改善ツールの作成まで、あらゆる場面でAIに上手に手伝ってもらうための「お願いの仕方のコツ」をご紹介します。
お願いの仕方(プロンプト)の”コツ”完全ガイド
AIの力を最大限に引き出す!
お願いの仕方 7つのコツ
① 役割を与える
「あなたはプロの保育士です」と役割を伝えよう。
② 文脈を伝える
「誰に」「何を」「何のため」を詳しく教えよう。
③ 条件を整理する
箇条書きで「やってほしいこと」「守ってほしいルール」を明確に。
④ 思考を説明させる
「ステップ・バイ・ステップで考えて」とお願いして精度UP!
⑤ 良い例/悪い例を示す
お手本を見せると、AIがあなたの好みを学習してくれる。
⑥ 出力形式を指定する
「表形式で」「箇条書きで」など完成形をイメージして伝える。
⑦ 対話して磨き上げる
一度で諦めず、会話をしながら理想の答えに近づけよう。
コツ1:役割(ペルソナ)を与える
「あなたは〇〇のプロです」とAIに役割を与えることで、その立場になりきった、専門性の高い一貫性のある回答を生成させることができます。
- 例(アイデア出し) 「あなたは5歳児クラスの経験豊富な担任保育士です。来月の運動会に向けて、子どもたちの意欲が高まるような、選手宣誓の言葉を5つ提案してください」
- 例(文章作成) 「あなたは園長先生です。来年度の入園説明会で、当園の保育方針と魅力を伝えるための挨拶文を、温かく安心感のあるトーンで作成してください」
- 例(プログラミング) 「あなたはVBAで業務効率化ツールを作るのが、得意な保育士です。職員のシフト希望を集計し、公平なシフト表を自動で作成するExcelツールを作るために、必要な要素や仕様をあげてください」
コツ2:文脈(コンテキスト)を具体的に、詳しく伝える
「何を」「誰に」「どんな目的で」「どんな状況で」といった背景情報を詳しく伝えることで、AIは状況を深く理解し、的確なアウトプットを生成します。
- 例(文章作成) 「7月号の園だよりに載せる『水遊びの注意点』に関する文章を作成してください」
- 対象: 0歳から2歳児の保護者
- 目的: 家庭での水遊びも含め、安全に夏を楽しむための注意点を分かりやすく伝えること
- トーン: 専門的になりすぎず、優しく呼びかけるような口調で
- 制約: 文字数は300字程度
- 例(画像生成) 「園庭の花壇をテーマにしたイラストを生成してください」
- コンセプト: 子どもたちが植えたカラフルな花が元気に咲いている様子
- 要素: チューリップ、パンジー、蝶々、にこにこ笑う太陽
- スタイル: 子どもに人気の絵本のような、温かみのある手描き水彩画風
- 色調: 明るく、元気が出るような色合いで
- 例(プログラミング)「毎月のシフト作成が大変なので、公平なシフトを自動で作って時間を節約できるようなものを、作ってください」
- 機能:基本情報(職員数、日付など)を入力する機能
ボタン一つで、全員にシフトを自動で割り振る機能
完成後、誰がどのシフトに何回入ったかを集計する機能 - 手順:①ユーザーが「作成開始」ボタンを押す。
②「職員数を入力してください」という小窓が出る。
③入力された人数のシフト表が新しいシートに自動で作られる。 - 見た目:「更新」ボタンはA1セルに配置する。
表のタイトル「〇月シフト表」は、B2セルに表示する。
土曜日は青色、日曜日は赤色でセルの背景を塗りつぶす。
表の外枠は太い線で、内側は細い線で罫線を引く。
見出しの行は、文字を太字にする。
- 機能:基本情報(職員数、日付など)を入力する機能
コツ3:条件を箇条書きで整理し、制約を明確にする
伝えたいことが多い場合や、守ってほしいルールがある場合は、箇条書きで整理して伝えるとAIが理解しやすくなります。 「〇〇は含めないで」「必ず〇〇という言葉を入れて」といった制約条件は極めて有効です。
- 例(お知らせ作成) 「秋の遠足のお知らせを、保護者向けに作成してください。以下の情報を必ず含めてください」
- 日時: 10月27日(金) 雨天時は10月30日(月)に延期
- 行き先: 〇〇公園
- 集合場所・時間: 保育園ホールに朝9時
- 持ち物: お弁当、水筒、レジャーシート、着替え、雨具
- 絶対ルール: アレルギー対応については別途連絡済みであること、当日の緊急連絡先は園の電話番号であることを必ず明記してください。
- 例(プログラミング)
- ルール①: 1人の職員が3日連続で同じシフトに入らないようにする。
- ルール②: 全員が少なくとも1回以上、早番・遅番で入るようにする。
- 優先順位: もし、両方ともが無理な場合、ルール①(連勤禁止)を必ず優先してください。
コツ4:思考のプロセスを説明させる(ステップ・バイ・ステップ)
複雑な問いに対して、「ステップ・バイ・ステップで考えてください」「結論に至った理由も説明してください」と指示することで、AIは論理的に順序立てて考えるようになります。 これにより、回答の精度が向上し、私たちはその思考プロセスを検証することができます。
- 例(対応方法の検討) 「子ども同士でおもちゃの取り合いが起きた際の対応について、新人保育士向けのガイドを作成したいです。まずは状況の把握、次に関わる子どもの気持ちの代弁、そして解決策の提案という流れで、ステップ・バイ・ステップで具体的な声かけの例を挙げながら説明してください」
コツ5:良い例や悪い例を提示する
あなたが求めるアウトプットの具体的な例をいくつか示すことで、AIはあなたの好みや期待する品質、ニュアンスをより正確に学習します。これは、文章のトーンなどを調整する際に、特に効果的です。
- 例(声かけの言葉遣い) 「子どもが片付けを頑張った時にかける言葉を、自己肯定感を高めるような表現で5つ考えてください。その際、以下の例を参考にしてください」
- 参考例(良い例): 『最後まで諦めずにできてすごいね!』『〇〇ちゃんが手伝ってくれたから、お部屋がピカピカになったよ、ありがとう!』
- 避けるべき例(悪い例): 『すごい!』『えらいね!』(※何が良かったのか具体的に伝える表現を求める)
コツ6:出力形式をデザインする
「表形式で」「箇条書きで」「です・ます調で」「VBAコードで」「日本語で」のように、希望するアウトプットの形式を明確に指定しましょう。 これにより、後工程での編集作業を大幅に削減できます。
コツ7:一度で完璧を求めず、対話を通じて磨き上げる
AIとのやり取りは「一回の指示」で終わらせる必要はありません。最初のアウトプットが期待通りでなくても、諦めずにフィードバックを与え、対話を重ねましょう。
- 例「もっと子どもたちがワクワクするような、楽しい言葉遣いに変更してください」
- 例「5つのアイデアのうち、2つ目の『探検ごっこ』について、具体的な準備物やルールをさらに詳しく教えてください」
- 例「出力されたVBAコードに、土日の背景に色を付ける機能を追加できますか?」
以上のプロンプトの”コツ”は、各種AIを提供している会社側から、既に公式で出されています。これらの情報を土台にしつつ、保育現場で使う想定で、一部アレンジを加えて記載しています。適当に作ったものではないので、その点は安心してご利用ください。
Gemini⇒Gemini for Google Workspace ヘルプ 「効果的な AI プロンプトの作成」
ChatGPT⇒OpenAI Help Center 「より良い結果を得るためのヒント」
(※ページは英語ですが、ブラウザの翻訳機能で十分に理解できます)
Claude⇒Anthropic 「プロンプトライブラリ」
【コピペOK】保育士向け㊙プロンプト集
AIを活用することで、日々の保育業務を効率化できます。ここでは、筆者が実際に試しているプロンプト(AIへの指示文)を、すぐに使える形でご紹介します。
注意: AIの回答はあくまで 【アイデア出しや下書き】 です。必ず先生自身の目で内容を確認し、仕上げを行ってください。
AI活用の基本フロー
質の高いAIの回答を引き出す秘訣は、質の高い情報入力にあります。「保育は観察から」という基本は、AI時代においても変わりません。
丁寧な観察
子どもの具体的な姿を捉える
プロンプト作成
観察内容を基にAIへ指示
AIが下書きを生成
アイデアや文章の草案を入手
先生が仕上げ
専門知識で推敲・完成
月案・週案作成のためのプロンプト
子どもの姿を具体的に記述することが、質の高い案を作成するコツです。
【基本】子どもの姿から月案・週案を作成する
以下の【子どもの姿】は、【○歳△か月】の子どもの様子です。
この姿をもとに、「保育所保育指針」および「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」を参考にして、【◇月】における月案と週案を立案してください。
出力項目は「ねらい」「内容」「環境構成」「予想される子どもの姿」「保育者の援助」とし、各項目で【☆個】ずつの案を【□文字以内】の箇条書きで出力してください。
【子どもの姿】
(ここに、先月の子どもの姿を、個人が特定できないように具体的に記述します)
【応用】クラスの状況に合わせて内容を深める
先ほどの提案に加えて、現在クラスでは【〇〇に力を入れている/△△が課題になっている】ので、その点も盛り込んだ案を提案してください。
クラスだより作成のためのプロンプト
保護者の方々の心に響く、温かいおたより作りをサポートします。
【案出し】前文や書き出しのアイデアをもらう
【○歳児】クラスが【△月】に発行するクラスだよりの前文案を、複数提案してください。
その際、【行事名:△△】への参加に対するお礼を、堅苦しくない親しみやすい文体で含めてください。
【構成】伝えたいことを整理してもらう
以下の箇条書きの内容を元に、乳幼児の保護者にとって最も伝わりやすい文章構成案を、複数提案してください。
【伝えたいことリスト】
・(ここに書きたいことを箇条書きで入力)
・(例:運動会での子どもたちの頑張り)
・(例:秋の製作活動の様子)
・(例:最近の子どもたちのブーム)
【タイトル】最適な見出しを考えてもらう
以下の文章に最も適切な題名案を複数提案してください。
題名には保育の意図が伝わるようにしつつ、【○文字以内】におさめてください。
【クラスだよりの文章】
(ここに仕上げた文章をコピー&ペーストします)
【工夫】読者の興味を引くアイデアをもらう
以下の文章を読んだ乳幼児の保護者が、ワクワクするような仕掛けや、さらに読みたくなるような文章案を複数提案してください。
【クラスだよりの文章】
(ここに仕上げた文章をコピー&ペーストします)
書類チェックのためのプロンプト
誤字脱字のチェックや、より伝わりやすい表現への修正に役立ちます。
【基本】誤字脱字・文章校正
以下の文章について、誤字脱字がないか、文章の流れに不自然な点はないか、意味が分かりにくい箇所はないかを確認し、修正案を提示してください。
【チェックしたい文章】
(ここにチェックしてほしい文章をコピー&ペーストします)
【応用】保護者目線でのチェック
以下の文章の読み手は、乳幼児をもつ保護者です。
「伝わりにくい部分はないか」「誤解を招く可能性はないか」「全体的に読みづらくないか」という3つの視点で文章を精査してください。
修正した方が良い部分と、その理由を具体的に教えてください。
【チェックしたい文章】
(ここにチェックしてほしい文章をコピー&ペーストします)
【意図の確認】テーマが伝わるかチェック
以下の文章は「【〇〇】」をテーマに書いたつもりですが、その意図は読み手に伝わるでしょうか?
もし伝わりにくい場合は、より意図が伝わる表現や修正箇所を提案してください。
【チェックしたい文章】
(ここにチェックしてほしい文章をコピー&ペーストします)
より良いプロンプトをAIに考えてもらう
実は、プロンプトそのものを”AIに考えてもらう”というアプローチも非常に有効です。
プロンプト作成のヒントをもらう
【○歳児】クラスが【△月】に発行するクラスだよりの前文について、私がイメージする通りの文章をAIに生成してもらうためには、どのようなプロンプト(指示文)を作成すれば良いですか?ポイントを教えてください。