AIツールもICTシステムも、無料で使えるものから有料のものまで様々です。「どれを選んだらいいの?」と迷ってしまいますよね。ここでは、それぞれのメリット・デメリットと、園の状況に合わせた選び方のポイントをご紹介します。
無料AIツールの魅力と限界
無料AIツールの魅力
- 導入のハードルが低い: 何といっても費用がかからないのが最大の魅力。気軽に試せます。
- 特定のタスクに特化して便利: 文章作成、アイデア出し、簡単な翻訳など、特定の作業をピンポイントで手伝ってもらうのに十分役立ちます。
- すぐに始められる: アカウント登録だけで使えるものも多く、特別な設定なしに今日からでも活用できます。
- AIの可能性を体験できる: まずは無料ツールでAIがどんなものか、どんなことができるのかを体験し、その可能性を感じることができます。
無料AIツールの限界・注意点
- 機能制限: 有料版に比べて、使える機能が制限されていたり、利用回数に上限があったりすることがあります。
- 広告表示: 無料で提供される代わりに、広告が表示される場合があります。
- サポート体制: 基本的に手厚いサポートは期待できません。使い方で困ったときは、自分で調べたり、コミュニティで質問したりする必要があります。
- セキュリティ・情報保護: 機密性の高い情報(特に個人情報)の入力は避けるべきです。(これは有料版でも同様に注意が必要ですが、無料版ではより慎重さが求められます)
無料ICTツール(またはシステムの無料プラン)の魅力と限界
無料ICTツール(無料プラン)の魅力
- 小規模な園や、まずは一部の機能だけ試してみたい場合に、導入のきっかけになります。
- 登降園管理の一部機能や、保護者連絡の基本機能など、限定的でも役立つ場合があります。
無料ICTツール(無料プラン)の限界・注意点
- 機能が大幅に限定的: 多くの無料ICT(または無料プラン)は、有料版へのお試しという位置づけが多く、本格的な園務効率化には機能が足りない場合がほとんどです。
- データ保存容量の制限: 登録できる園児数や保存できるデータ量に上限があることが多いです。
- サポートが限定的または無い: 有料版のような手厚いサポートは期待できません。
- セキュリティ面の懸念: 無料で提供されているシステムの場合、セキュリティ対策が有料版ほど万全でない可能性も考慮し、慎重に選ぶ必要があります。
- 継続性の不安: 無料サービスは、予告なく終了したり、仕様が変更されたりするリスクがあります。
有料ツールを検討するケースとは?
無料ツールでAIやICTの便利さを実感し、「もっと本格的に活用したい!」「園全体の業務を改善したい!」となったら、有料ツールの導入を検討するタイミングかもしれません。
有料AIツールを検討するケース
- より高度な機能を使いたい: 文章生成の質、分析能力、対応できるタスクの幅などが向上します。
- 利用制限なく使いたい: 利用回数や文字数制限などを気にせず、存分に活用したい場合。
- チームでの利用や連携をスムーズにしたい: 複数人でアカウントを共有したり、他のツールと連携したりする機能が充実していることがあります。
- 最新のAIモデルを利用したい: より高性能なAIモデルが有料プランで提供されることが多いです。
有料ICTシステム(園務支援システム)を検討するケース
- 園全体の業務を本格的に効率化したい: 園児管理、登降園、指導計画、保護者連絡、請求業務などを一元的にシステム化し、大幅な業務削減を目指す場合。
- 手厚いサポートが必要: 導入時の設定支援、操作研修、トラブル発生時の迅速なサポートなどを求める場合。
- 高度なセキュリティが求められる: 大切な園児情報や園の機密情報を扱うため、信頼性の高いセキュリティ対策が不可欠な場合。
- 複数人での利用やデータ共有が前提となる場合: 全職員が同じ情報を共有し、スムーズに連携を取りたい場合。
- 法令改正への対応や継続的なアップデートが必要な場合: 保育関連の制度変更に迅速に対応し、常に最新の状態でシステムを利用したい場合。
- ペーパーレス化を本格的に進めたい場合:特に近年は、監査に対応したICTシステムも登場しており、膨大な書類や資料を用意する必要がなくなります。
- 保護者とのコミュニケーションをより円滑に、多様にしたい場合:写真や動画を活用したドキュメンテーションや、日誌などと連携して日々の連絡を効率的に行ないたい場合など。
園の状況に合わせたツールの選び方
では、実際にツールを選ぶ際には、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。
- 【課題の明確化】何のために導入するのか?
- 「どんな業務に時間がかかっている?」「何を一番改善したい?」など、まずは園が抱える課題を明確にしましょう。課題解決の目的によって、必要なツールや機能が見えてきます。
- (例:書類作成の負担が大きい→文章作成支援AI、アイデア出しAI。 園児の登降園管理が煩雑→保育ICTシステムの登降園管理機能。)
- 【機能の比較検討】必要な機能は何か?
- 課題解決に必要な機能は何かをリストアップし、複数のツールを比較検討しましょう。無料ツールで試せるものは実際に使ってみて、操作感や機能を確認するのがおすすめです。
- 保育ICTシステムの場合は、デモンストレーションを依頼したり、トライアル期間を利用したりして、実際の業務で使えるかじっくり見極めましょう。
- 【予算の確認】どれくらいの費用をかけられるか?
- 有料ツールを検討する場合は、初期費用や月額費用、オプション費用などを確認し、園の予算内で無理なく運用できるか検討します。費用対効果も重要なポイントです。(特にICTについては、助成金や補助金が充実しているので、そちらの活用とあわせて検討されると良いかと思います)
- 【使いやすさ】職員が使いこなせるか?
- どんなに高機能でも、職員が使いこなせなければ意味がありません。直感的に操作できるか、マニュアルやサポートは分かりやすいかなど、ITスキルに不安がある職員でも使えるようなツールを選びましょう。
- 導入前に、実際に使う職員の意見を聞いたり、操作研修の機会を設けたりすることも大切です。
- 【サポート体制】困ったときに助けてもらえるか?
- 特に有料のICTシステムの場合、導入時のサポートや、運用開始後の問い合わせ対応、トラブル時のサポート体制が充実しているか確認しましょう。電話やメール、チャットなど、どのようなサポートが受けられるのかもポイントです。
- 【セキュリティ】情報は安全に守られるか?
- 個人情報や機密情報を扱うため、セキュリティ対策は最も重要な選定基準の一つです。データの暗号化、アクセス制限、不正アクセス防止策などがしっかりしているか、プライバシーポリシーは明確かなどを確認しましょう。
- 【拡張性・連携性】将来的な変化に対応できるか?
- 園の規模やニーズの変化に合わせて、機能を追加したり、他のシステムと連携したりできるかなど、将来的な拡張性も考慮しておくと良いでしょう。
- 【実績・評判】他の園での導入事例は?
- 同じような規模や地域の園での導入事例や、利用者の口コミ・評判も参考にしましょう。
ICT利用者視点のリアルと保育ICT推進協会について
ここまで、AIとICT、無料と有料の魅力や限界などをお伝えしてきました。AIについては、他の記事でも紹介していますので、ここからはICT(コドモン)を実際に利用してきた、筆者自身の感想を述べさせていただきたいと思います。なお、あくまでも”個人的な感想”になりますので、”参考程度”として読んでください。
- 保育のつながりの可視化
『年カリ・月・週案・日誌などの記録が、連携・コピーできるので、保育の”つながり”が分かりやすく可視化され、入力作業も短縮された。また、過去の同じ時期の指導案を参考にしていくことで、より良い指導案を立案することができた(日誌や他の書類にも言えることで、特に先輩方の記録は、自身の学びにもつながった)』 - 登降園時間把握の省力化
『登降園時に、早朝・延長料金が発生する子とそうでない子がおり、そこを保育者が時計をみて判断せずとも、ICTの打刻一つで済むようになった(特に混む時間帯は、そこを把握するのが大変だったので助かった)』 - 職員間による情報共有前提の話し合いの深化
『年カリ・月・週案・日誌などの記録や保護者からの連絡などを、職員間で共有できるので、読んだ上で保育の具体的なアドバイスをもらったり、一緒に考えたりして、保育のより深いところで話すことが増えた(情報共有から話し合いが始まるのと、既に共有がされている前提では、まるで話し合いの質が違う)』
…etc.
ということで、他にもいろいろとありますが、”個人的な感想”なので、ここまでにしておきます。
では、そんなICTにはどのようなものがあるのか?どんな業務に取り入れたら効果があるのか?実際の料金はいくらなのか?補助金対象なのか?…等々、いろいろと考えることがあるかと思います。そこで、ここの”いろいろと考える”お手伝いに最適なのが、一般社団法人 保育ICT推進協会です。

サイトを閲覧していただければお分かりのように、ICT導入・乗り換えの相談は無料ですし、その園に合わせたプランを提案してもらえます。そしてなにより、こちらの代表理事は【保育経験者】で、現場目線のお話しができるのが、一番の魅力だと思います。是非一度、相談するところから利用してみてはいかがでしょうか。
まずはスモールスタートという選択もアリ!
いきなり大規模なシステムを導入するのに不安がある場合は、まずは無料のAIツールを個人で試してみたり、ICTシステムの特定の機能だけを限定的に無料枠で利用してみたりするなど、スモールスタートで効果を実感してみる…というのも一つです。そこで得た経験や課題をもとに、本格的な導入を検討していくのも良いでしょう。
ここで一つ、大切なことをお伝えします。ツールは導入するのが目的ではなく、
【保育の質を向上させるため】
【子どもたちと向き合う時間を増やすため】
【職員の負担を軽減するため】
です。これらの本来の目的を見失わずに、導入をしていくことがなにより重要です。
特に、有料のICTシステムを導入すると「せっかくこれだけの金額をかけたんだから、この機能もあの機能も使いたい!もったいない!」という考えのもと、業務効率化どころか業務過多になることもありえます。”もったいない精神”は尊いものですが、ICTシステムに関しては、あくまで上記の目的のための【手段】として割り切って考え、何の機能を利用して、何の機能を利用しないか、という慎重な判断が求められるでしょう。ここについては、似た話で「AI時代に求められる保育士のスキルと、変わらない大切なこと」のブレイク(コラム)にも記載していますので、よければそちらも読んでみてください。