AIの基本的なことを知ったところで、いよいよ実践編です。この章では、無料で利用できるAIツールで、日々の業務を具体的にどのように効率化するのか、多くのヒントと具体的な方法をご紹介します。どの情報も必ず時短に繋がりますので、読んだら即実践!!で是非、活用してみてください。
書類作成をAIで劇的に時短!
保育士の仕事は、子どもたちとの触れ合いだけでなく、たくさんの書類作成にも追われがちです。「指導案」「おたより」「要録」など、心を込めて作成したいけれど、なかなか時間が取れない…そんな悩みをAIがサポートし、解決します!
指導案・おたより・要録作成(下書き)が驚くほど楽になる無料AIツール活用術
これまで何時間もかかっていた書類作成の「下書き」や「たたき台」作りが、AIにお願いするだけで、あっという間にできてしまいます。もちろん、AIが作ってくれたものをそのまま使うのではなく、保育士としての経験や見方、子どもたちの実態に合わせて加筆・修正することは必須です。AIを「賢いアシスタント」として活用し、空いた時間で子どもたちとじっくり向き合ったり、保育準備にあてたりして、うまく使っていきましょう。
おすすめ無料AIツール(Gemini / NotebookLM)と具体的な活用例
- Gemini (ジェミニ): Googleが提供するAIチャットサービスです。会話形式で自然にお願いごとができます。
- 準備:まず、Googleアカウントを作成した上で、【Gemini】を検索して開きます。

- 活用例1:指導案の骨子作成
- 【Geminiに相談】と書かれた入力欄に、例えば次のように入力します。
「5歳児クラスで、6月に行う『雨の日を楽しむ』をテーマにした週案のたたき台を作ってください。ねらいと内容、具体的な活動の展開などについても考えて教えてください」
- 【Geminiに相談】と書かれた入力欄に、例えば次のように入力します。

すると、以下のような活動案を、一瞬で出力してくれます。
(※モデルは左上の欄から選択することができ、今回は速さ重視で「2.5Flash」を選択しています)
はい、5歳児クラス向けの6月『雨の日を楽しむ』をテーマにした週案のたたき台ですね。梅雨の時期ならではの活動を通して、子どもたちが雨を肯定的に捉え、豊かな感性を育めるような内容を提案します。
5歳児クラス 6月 週案たたき台
テーマ: 『雨の日を楽しむ!』~雨の恵みを感じて遊びを広げよう~
【ねらい】
- 雨の日ならではの自然現象に興味を持ち、五感を通して雨の様子や音、匂いなどを感じる。
- 雨の日でも室内外でできる様々な遊びを通して、工夫したり、友だちと協力したりする楽しさを味わう。
- 雨の恵みについて知り、自然への感謝の気持ちや大切さを育む。
- 梅雨の時期の体調管理に関心を持ち、健康に過ごすことの大切さを学ぶ。
【週全体の具体的な活動内容(例)】
1. 自然との触れ合い・観察活動
- 雨の日の散歩: 長靴やカッパを身につけて、雨上がりの園庭や園周辺を散歩する。水たまりの様子、雨に濡れた植物、カタツムリなどの生き物を見つける。
- 雨の音遊び: バケツ、傘、トイレットペーパーの芯など、様々な素材を使って雨音を聞き分けたり、自分たちで雨音を表現したりする。
- 雨粒観察: 軒下や葉っぱに溜まった雨粒を虫眼鏡で観察する。
- カエル・カタツムリ探し: 雨の日によく見かける生き物を探し、観察する。
2. 製作・表現活動
- てるてる坊主製作: 廃材や布を使って、個性豊かなてるてる坊主を作る。
- 雨の日の絵: 窓から見える雨の様子や、雨の中で遊ぶ自分たちの姿を絵に描く。
- 傘・長靴デザイン: 画用紙やビニール袋で傘や長靴の形を作り、自由に模様を描いて飾る。
- しずくアート: スポイトや絵の具を使って、画用紙に雨粒のように色を落とし、にじみを楽しむ。
- 雨の歌・手遊び: 「あめふり」「かたつむり」などの歌を歌ったり、雨に関連する手遊びを楽しむ。
3. 室内での遊び・学び
- 水遊び(室内): たらいに水を張り、ペットボトルやジョウロ、スポンジなどを使って水を移したり、泡を作ったりして遊ぶ。
- 雨の日シアター: 職員が雨の絵本を読み聞かせたり、パネルシアターやペープサートで雨にまつわるお話をする。
- 「雨の日の宝物」探し: 室内で雨の日にちなんだものを探すクイズや、隠された宝物(雨に関連するイラストなど)を探す遊び。
- 体調管理の話: 「どうして雨の日は体が冷えるのかな?」「どうすれば風邪をひかないかな?」など、雨の日の体調管理について分かりやすく話す。手洗いの大切さなどを再確認する。
4. 料理・食育活動
- てるてる坊主おにぎり: 白いご飯を丸めててるてる坊主の形にし、海苔やチーズで顔を飾る。
- レインボーゼリー: 数種類の色のゼリーを作り、層にして「虹」に見立てる。
【具体的な活動の展開例】
月曜日:雨の日ってどんな日?~五感で感じる雨~
- 午前:
- 朝の会:今週のテーマ「雨の日を楽しむ」について話す。雨の日の歌を歌う。
- お散歩:長靴とカッパを身につけて園庭や園周辺を散歩。水たまりの様子、雨の匂い、葉っぱに溜まった雨粒などを観察する。
- 室内活動:見つけてきたもの(濡れた葉っぱ、小枝など)を観察したり、雨の音を表現する「雨音遊び」(バケツを叩く、ペットボトルに小豆を入れて振るなど)。
- 午後:
- 製作活動:「しずくアート」スポイトを使って絵の具を画用紙に落とし、雨粒のにじみを楽しむ。
- 絵本の読み聞かせ:雨に関連する絵本(例:「しずくのぼうけん」など)
火曜日:雨の日の生き物に出会おう!~カエルとカタツムリ~
- 午前:
- 朝の会:前日の雨の日の発見について話し合う。
- 生き物探し:雨上がりの園庭でカエルやカタツムリを探す。見つけた生き物は観察ケースに入れ、よく観察する。(触る際は手洗いの徹底を伝える)
- 製作活動:「カエルとカタツムリの折り紙」折り紙でカエルやカタツムリを作り、壁面に飾る。
- 午後:
- 雨の歌や手遊び:「かたつむり」の歌に合わせて手遊びを楽しむ。
- お話:「雨の日によく見かける生き物たち」について、図鑑や写真を見せながら紹介する。
水曜日:てるてる坊主を作ろう!~晴れを願って~
- 午前:
- 朝の会:「明日は晴れるかな?」と問いかけ、てるてる坊主について話す。
- 製作活動:「てるてる坊主製作」廃材や布、毛糸などを使って、一人ひとりオリジナルのてるてる坊主を作る。顔を描いたり、飾りをつけたりする。
- 午後:
- 遊び:「てるてる坊主リレー」作ったてるてる坊主を持って、室内でリレー遊びをする。
- 食育活動:「てるてる坊主おにぎり」おにぎりを丸めて、海苔やチーズで顔をつけ、てるてる坊主に見立てる。
木曜日:室内で楽しむ雨の日遊び~水と泡の感触~
- 午前:
- 朝の会:雨が降っていても楽しい室内遊びについて話す。
- 水遊び(室内):たらいに水を張り、ペットボトルやジョウロ、スポンジなどを使って水を移したり、泡を作ったりして遊ぶ。水の感触や、水の性質に触れる。
- 製作活動:「雨の日の絵」窓から見える雨の様子や、雨の中で遊ぶ自分たちの姿を絵に描く。
- 午後:
- シアター:「雨の日シアター」パネルシアターやペープサートで雨にまつわるお話を見る。
- クイズ:「雨の日の宝物探し」室内にある雨にちなんだイラスト(傘、長靴、カタツムリなど)を探すクイズを楽しむ。
金曜日:雨の恵みに感謝しよう!~健康に過ごすために~
- 午前:
- 朝の会:一週間の「雨の日を楽しむ」活動を振り返る。雨が降ることで植物が育ったり、飲み水になったりすることなど、雨の恵みについて話す。
- 体調管理の話:「どうして雨の日は体が冷えるのかな?」「どうすれば風邪をひかないかな?」など、雨の日の体調管理について分かりやすく話す。手洗いの大切さなどを再確認する。
- 歌遊び:みんなで歌える雨の歌を歌い、体を動かす。
- 午後:
- 食育活動:「レインボーゼリー作り」数種類の色のゼリーを作り、層にして「虹」に見立てて食べる。色の変化を楽しむ。
- 振り返り:一週間で楽しかったこと、発見したことなどを発表し合う。
【配慮事項】
- 安全への配慮: 雨の日の散歩では、滑りやすい場所や足元に気を配り、必ず職員が複数で引率する。室内での水遊びの際も、床が濡れて滑りやすくなるため、注意喚起を徹底する。
- 衛生面への配慮: 雨に濡れた場合の着替えや、手洗い・うがいの徹底を促し、風邪などの感染症予防に努める。
- 個々の興味関心への配慮: 子どもたちの興味に合わせて、活動内容を柔軟に調整できるよう準備しておく。
- 雨天中止の活動の代替案: 予定していた屋外活動ができない場合でも、室内で楽しめる代替案を複数用意しておく。
- 保護者への連携: 週案を共有し、家庭でも雨の日を楽しむ声かけや活動ができるよう促す。
このたたき台が、先生方の6月の週案作成の一助となれば幸いです。子どもたちが雨の日を心ゆくまで楽しめますように!
プロンプト(指示文)がかなり大雑把ですが、それでこのクオリティの「たたき台」を一瞬で出せるので、確実に時短に繋がります。更に、クラスの状況や盛り込みたい詳細な内容などの情報(個人情報等は避けた上で)を入力していくことで、修正・加筆等を最小限に抑えた「使えるたたき台」を、出力させることも可能です。
- 活用例2:保護者向けおたよりの文案作成
- 次は、このように入力してみます。
「今週末に保育参観があります。保護者の方へのおたよりで、保育参観のお知らせとお願いを書きたいです。日時は〇月〇日(土)10時~11時。内容は、子どもたちの普段の様子を見てもらうこと、活動に一緒に参加してもらうコーナーがあること、持ち物は特にないこと、写真はOKだけどSNSへのアップは控えてもらうことを盛り込み、温かい雰囲気でお願いします」
- 次は、このように入力してみます。

もちろんです。保護者の方へ向けた、保育参観のお知らせのおたよりを作成します。
〇月〇日(土)保育参観のご案内
新緑の美しい季節となりました。保護者の皆様、いかがお過ごしでしょうか。
さて、来る**〇月〇日(土)**に、保育参観を実施することになりましたので、ご案内いたします。
この日は、子どもたちが普段、園でどのように過ごしているのか、生き生きとした姿をゆっくりとご覧いただきたいと思っております。いつもの笑顔や、友だちとの関わり、集中して遊ぶ様子など、きっと新しい発見があることと思います。
また、今回はお子さんと一緒に楽しめる活動参加コーナーもご用意しています!普段、子どもたちが楽しんでいる遊びを、ぜひこの機会に一緒に体験してみてください。保護者の皆様にも、お子さんと一緒に素敵な思い出を作っていただけたら嬉しいです。
【保育参観の詳細】
- 日時: 〇月〇日(土)10時~11時
- 場所: 各クラス保育室、園庭(当日の活動内容によります)
- 持ち物: 特にございません。動きやすい服装でお越しください。
- その他:
- お子さんの普段の様子を大切にしたいので、写真撮影は可能です。しかし、個人情報保護のため、SNSへのアップロードはご遠慮くださいますようお願いいたします。
- ご来園の際は、スリッパのご用意がございます。
お忙しいとは存じますが、お子さんの成長を感じていただける貴重な機会です。先生一同、子どもたちと一緒に皆様のお越しを心よりお待ちしております。
ご不明な点がございましたら、ご遠慮なく担任までお声がけください。
〇〇保育園 担任一同
このように、文章に関する下書きやたたき台は、【Gemini】が突出して良いものが出てくるので、おすすめです。
- NotebookLM (ノートブックエルエム): こちらもGoogleのAIツールですが、Geminiと大きく異なるのが、アップロードした資料(PDFやテキストファイルなど)の内容をAIが理解し、それに基づいて質問に答えたり、文章を生成したりしてくれるところです。つまり、最初の学習データを、ユーザー(保育士)側が用意するという点で、これまでの生成AIとは、性質が異なります。例えば、園の年間指導計画や過去の要録などをアップロードしておけば、それらを踏まえた提案をしてくれるので、より園の方針に沿った書類作成が可能になり、”使い方によっては”強力な味方になり得ます。
- 準備:Googleアカウントを作成した上で、今度は【NotebookLM】を検索して開きます。

最初の注意文を読んだ上で、チェックボックスにレ点を入れてもいいですし、そのままスルーで「OK」でもいいです。すると、次に画面下部に「ノートブックを新規作成」のボタンがあるので、そこを左クリックします。

ソースを追加していきます。無料版では最大50個で、1つのソースあたりの容量上限は200MBです。
(※2025年6月時点の情報)

①ソースを追加。②入力して、下書きを作成する。
(※ここに関しては、各園の内部データを利用することになるので、例示はできかねますが、ソース元のデータの質と量が十分であれば、②の下書きの精度が上がります。逆にいえば、①のデータが不十分だと、②の結果も微妙になります。”使い方によっては”と、強調したのはそのためです)

AIへの「お願いの仕方」(プロンプト)のコツ!
AIに上手に仕事を手伝ってもらうためには、「お願いの仕方」、つまりプロンプトがとても重要です。AIは、私たちが伝えた言葉から意図を読み取ろうとします。より具体的で、分かりやすいお願いをすることで、期待に近い答えが返ってきます。
- コツ1:具体的に、詳しく伝える
- 「何について」「誰に」「どんな目的で」「どんなトーンで」など、できるだけ具体的に情報を伝えましょう。
- 例:「保育園の夏祭りのポスターに載せるキャッチコピーを考えてください。対象は地域の未就園児の親子です。楽しそうで、気軽に参加したくなるような、わくわくする言葉でお願いします。文字数は30文字以内で」
- コツ2:箇条書きや条件を提示する
- 伝えたいことが多い場合は、箇条書きで整理して伝えるとAIも理解しやすくなります。また、「〇〇は含めないで」「必ず〇〇という言葉を入れて」といった条件を付けることも有効です。
- 例:「秋の遠足(行き先:〇〇公園)のお知らせを保護者向けに作成してください。以下の情報を必ず含めてください」
- 日時:〇月〇日(金) 雨天時は〇月〇日(月)に延期
- 集合場所・時間:保育園ホール 9時
- 持ち物:お弁当、水筒、レジャーシート、着替え、雨具(念のため)
- その他:アレルギー対応については別途連絡済み。当日の緊急連絡先は園の電話番号
- コツ3:出力形式を指定する
- 「表形式で」「箇条書きで」「です・ます調で」「〇〇文字以内で」のように、どんな形で答えてほしいかを伝えると、望んだ形式で出力してくれます。
- コツ4:一度で完璧を求めない
- AIが出した答えがイマイチだったら、諦めずに「もっとこうしてほしい」「ここを修正して」と追加でお願いしてみましょう。対話を重ねることで、より良いものに近づけていくことができます。
最初は難しく感じるかもしれませんが、何度か試しているうちにコツがつかめてきます。また、こう言っては元も子もないのですが、近年のAIはこのようなコツがなくても、有益で正確な結果を出してくれることも多いので、”とにかく使う!”という意識でくり返し使っていき、AIとのコミュニケーションに慣れ、業務の効率化に繋げていってください。